法的に有効な遺言書がある場合、原則、その通りに相続手続きをして分けることができます。
よく遺言書をめぐって裁判になることがあります。
当然ですが申立人は財産をもらえない、もしくは少なくて納得のいかない人です。
しかし、これは遺言書通りに分けられるかどうかとは別の話です。
1.遺言書通りに分けられないケースとは
2、遺言執行者を決めておく
3.遺言執行における実務
1.遺言書通りに分けられないケースとは
もし相続人どうしで話し合って全員納得するのであれば、遺言書の内容とは違う分け方をすることができます。
当然その後問題の起きない内容にすべきですが、
相続人の中に、権力の強い人がいたり、他の相続人を言いくるめてしまうような人がいると起きる可能性はあります。
また銀行や証券等の窓口では、遺言書があっても、
それぞれ所定の用紙に相続人全員が署名捺印をするように指示されることが多く、
遺言書によって簡便にできるはずの手続きがスムーズにいかないこともあります。
理由は公正証書ではなく自筆の遺言書であったり、
窓口担当が不勉強だったり、
一般の人で交渉力がなかったり、とさまざまです。
さらに重要なのは、
「遺留分」という、他の相続人が最低限守られた相続分を超えて特定の人にあげていた場合です。
遺留分減殺請求といってその相続人はその分を取り戻すことができます。(特に裁判の必要はないとされています)
逆に多くもらっている人はあがいても仕方ありません。(無駄な裁判をすることになります)
裁判になるとすれば、財産の価額や遺留分は具体的にいくらかでもめるケースばかりです。
2.遺言執行者を決めておく
遺言執行者とはその遺言書の内容を実現する人のことをいいます。
遺言書が設計図だとすれば遺言執行者は職人といったところでしょうか。
基本的には遺言書の中で、作ったご本人が信頼している方を指名することが多いです。
遺言内容の実現とは、
例えば住んでいた家と土地の名義をその奥様のものに変えたり、預貯金を解約して指定した人に引き渡したり、
証券ならば指定した人名義の口座に移す等があげられます。
遺言執行者が指定された遺言書があると、
遺産分けの話し合いと書類の作成、署名・捺印という過程をすべて省略し、
手続きの大部分は相続人の協力を得ることなく、遺言執行者本人の実印を使用してスムーズにすすめることができます。
遺言執行者の力は強く、他の相続人が内容と違う名義変更・解約をしたとしても
もとに戻すように請求でき、それらの行為は無効になります。
3.遺言執行における実務
相続人が話し合っても、遺言執行者の合意がないと内容が覆ることはありません。
遺言書を作った本人亡き今、本人の意思を実現する重要な仕事です。
いろいろな学説はありますが、遺言書を作った本人の代理人ともいえます。
例えば、前に作った遺言書があったり、遺言書の中で生命保険金の受取人を変えたりしている場合、
内容がくいちがう場合があるので亡くなってからすぐに各窓口に通知するようにします。
遺言執行者が実印を持って出向いても、相続人全員の署名捺印を要求する窓口もまだまだあるようです。
正しい対応をしてもらいたいものですが。
遺言書を添付書類として相続税申告できるのに
いまだに「別に遺産分割協議書にサインしてくれ」とかいう税理士もいるからなあ・・・
いい加減やめてくれないかな。
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