事業承継の概要 その1 代表の地位編

事業承継には大きく分けて2つの面があります。

1つは「代表の地位の承継」、もう1つは「自社株など資産の承継」です。

どちらも相続をきっかけにするには遅すぎで会社にとって命取りになりかねません。

専門家がチームを組んで対応して、先代と後継者の協力があって初めて成り立つものです。


まず「代表の地位の承継」をみてみましょう。

 1.代表の地位の承継とは

 2.併走期間にすること

 3.計画が遅れた場合のリスク

 4.経営者の心理

1.代表の地位の承継とは

 

代表取締役という地位を承継すること、これこそ外見部分での事業承継となります。

 

今ほど情報網の発達していない時代から、先代はノウハウや技術の多くを「感覚」で経営してきました。

どのタイミングで売ればよいか、借り入れをすればよいか、どの人脈を使えばよいか等漠然としたものではありますが、

長年の経験でしかわからない、それはこれからも必要不可欠なものです。

 

ただし、これからの後継者は当然、客観的な「合理的判断基準」に基づいて進めなければなりません。

多くの情報が一般の人にも見られて、銀行や大企業が破たんする時代ですから、

確実な数字や計画がない会社とはいくら長年の付き合いがあっても取引しません。

 

 

2.併走期間にすること

 

基本的に先代は保守的で、新しい経営者はそれに反発しがちです。

しかし、代表の地位が変わった瞬間に経営体制・経営計画がまるごと変わってしまっては

会社の内部・外部ともに混乱を生む原因となってしまいます。

この混乱を避けるためにはそれなりの併走期間が必要になります。

 

その間に、

ふさわしい後継者になるための教育やOJT、

会社の経営理念や顧客リストの引き継ぎ、

事業承継周知のための取引先や金融機関への挨拶周り、

家族内・会社内での会議

・・・等々を行なわなければなりません。

 

そのための事業承継計画書は特に重要なものとなります。

そしてなるべく早くからの事業承継を行うことが必要です。

 

 

3.計画が遅れた場合のリスク

 

先代が高齢になり、体が思うように動かなくなり、職場や取引先、金融機関へも顔を出せず

先述した事柄を直接自ら行えなくなった場合は社内外の信用はなくなります。

 

もし認知症になったりしたときの議決権や決定権は?

重要な業務や借入ができなくなり、会社経営がストップする可能性があります。

 

ましてや亡くなった時には自社株自体が相続財産の対象になり、

会社が分裂、最悪の場合廃業に追い込まれる可能性もあります。

 

 

4.経営者の心理

 

とはいってもどんな経営者でも、自分が作り上げた会社を手放したり、引退する寂しさを心に持っています。

それを他人には話せない、わかってもらえないからこそ(社長は孤独だとよくいいます)

寄り添う人、背中を押す人が必要であり、家族会議や事業承継のセレモニー等も重要なのです。

 

次回はもう1つの面、「自社株の承継」をお伝えします。→事業承継の概要 自社株編

 

 

 →→【目次:事業承継特集】