預貯金が凍結されるのはなぜか

預貯金口座は、金融機関(以下、銀行)が

その名義の人が亡くなったのを知った時点で凍結されることになるのはご存知かと思います。

 

これは、銀行側がその名義人の相続人が誰であるかを知ることができないためです。

 →相続人調査っておおげさな気もするけど

 

実際よくあるのですが、

夫が亡くなって妻が窓口で「夫の財産は私のものだから下ろしてください」と

言ってみても、少額でない限り「はいわかりました」となることはありません。

(「少額」である金額は金融機関によります)

法律上では、妻だけでなく、

その子どもや、子供がいない場合は兄弟(もしくは甥姪)との共有の財産であるからです。

 →子どもがいない人の相続

 

 

これは窓口に来た相続人への二重払い、

誤って無関係の人に払い戻しなどをしてしまう等の危険性があること、

また払いだしたことで相続人間の紛争へ巻き込まれることを避けるためにも

 

相続人が誰であるか、どういった分け方をするのかなど

客観的な資料の提出によって確実なことがわかるまで、

一切の入出金を行わないことで被相続人の財産を保全する意味があります。

 

これはメガバンクやゆうちょ銀行のように相続センターがあるところよりも

JAや信用金庫の方が、支店長の責任や判断が大きくなるため顕著です。

 

今までは、亡くなった時点で自動的に法定相続分で各相続人のものとなる

過分債権」として各自への払い戻しもできたのですが、

 

平成28年に預貯金については不動産等と同様に

どういう分け方をするか話し合いが成立し、

相続人全員の実印での署名捺印が必要な

不可分債権」であるとの判例が出たことを受けています。

(実際は今までも、解約には実務上全員の署名捺印が必要だったわけですが)

 

預貯金の相続手続きを放置するリスクとしては、

「預貯金についても時効が消滅する危険性がある」ことが考えられます。

銀行預貯金は5年間の消滅時効にかかる「商事債権」で、

信用金庫など共同組織への預貯金は「通常債権」の10年間の消滅時効に該当するため、

金融機関が消滅時効を主張できることも考えられます。

(平成30年1月現在)

 

もっとも銀行側がこれを主張することは実務上あまりありませんが、

取引履歴が出る期間も限られているので放置することはうまくないことに変わりはありません。

 

かと言って、

凍結される前にお金を引き出しておこうとATM等で出金したりした場合、

相続人間の話し合いの時にもめる原因になったり、

税務署側からの調査で突っ込まれる原因にもなることがあるので避けた方がよいのに変わりはありません。

また相続財産を処分したとみなされ、いざというとき

後々相続放棄などができなくなることも考えられます。

 

だいたい遺族はまず葬儀会社や病院に相談してみるのですが、

「今のうちにおろしてしまった方がいいですよ」と返答が来ることが多いです。

(悪気があるわけではなく、費用を払ってもらえないと困るから!)

 

引き出したことで残高が合わなくなり、相続人間でもめかけている、

という事例を我々も多くみています。

やむを得ず、葬儀費用や入院費などが必要で引き出す場合には

その領収書や支払いの明細を取っておくようにした方が賢明です。

 

または銀行によっては協力してくれるところもあるので相談したほうがよいでしょう。

(確実に凍結はされてしまいますが・・・)