借地権の相続

土地が亡くなった方名義でなく、借地であることはよくある話です。

 

昔からあるこの借地契約は、借りている側(借地人)が半永久的に使えるような

自動更新がついているようなものだったため、

平成4年に元の所有者が有利になるように借地法が改正されました。

 

基本的に一般の相続で扱うのは平成4年より前の契約が多いので

この昔からの借地権(ここでは「旧借地法」と呼びます。)

にまつわるよくある簡単な質問を見ていきましょう。

 

1.借地も相続財産になるか?

2.借地も相続税の対象になるか?

3.相続したら地主の許可は必要か?

4.契約書名義の書き換え料は必要か?

5.地主に借地権を買い取ってもらえるか?

6.結論

 

1.借地も相続財産になるか?

 

「借地権」として相続されます。

ただ、分けやすい預金や証券、売ったり利用することもできる土地所有権と違い、

遺産分けの話し合いでは後回しにされがちです。

主な遺産を分けた後に、あとから聞いてみたら意外な価値がつくことがわかって相続人間でもめる原因になることも多くあります。

 

 

2.借地も相続税の対象になるか?

 

財産である以上、相続税の対象になります。

普通の土地の相続同様、国税庁が定めている「路線価」を参考にします。

所有者の持っている部分の「底地」と

借りている部分の「借地権」との割合は30%~90%、

市内ですとだいたい借地権割合は70%であるようです。

 

例えば、路線価で平方メートルあたり20万円、200㎡の土地を借りているとすると

20万円✖200✖0.7として2800万円が相続税としての評価額ということになります。

 

3.相続したら地主の許可が必要か?

 

特別な承諾は必要なく、土地の賃貸借契約書を書き換える義務もありません。

土地を管理する地主さんに

「土地の賃借権を相続により取得しました」と通知するだけです。

 

ただし、家賃振込の問題や連絡先の関係で

知らせておかないとお互いに困ることはたくさんあります。

 

そして、建物の所有権(名義)は変更する必要があります。

よく間違える方も多いのですが、

亡くなった人(父など)と同居していなかった場合でも借地権は相続することができ

「借地権者が亡くなったのなら土地を返してほしい」という

地主の要求に応じる必要はありません。

 

4.契約書名義の書き換え料は必要か?

 

亡くなったことを機に、

今まで借りていた期間も含めて引き続き、現在の2人で新たに契約書を結びなおすと

今後のために良い場合もあります。

 

ここでよくあるのが、地主から「名義書き換え料」や「更新料」としての請求です。

相続により引き継いだ場合にはこれらは払う必要はありません。

 

ただ、地主は機会があれば値上げをしたい、と思っているので

よく見たら地代が長いこと昔のままだったり、

現在の経済情勢に会っていない、とか今後も良好な関係でいたい場合には

これをいい機会として考えてみることもアリでしょう。

 

 

5.地主に借地権を買い取ってもらえるか?

 

亡くなったあと、誰も住む予定がないから地主さんに借地権を買い取ってほしいと

思う相続人はたくさんいるのですが、結論から言うと

地主が買い取るということは相当稀です。

 

よほど何かの事情で買い取るとなっても、

上記で述べた評価額で買ってもらうことは不可能だと思ってください。

これは立場を入れ替えて考えるとわかるかもしれません。

 

 

6.結論

 

旧借地法は、借りている人(またその相続人)が半永久的に守られているような法律です。

また契約書に細かいことが書いてあってもその通りにならないことが多いのが実情で

無理にそれに従わせようとするとすぐに裁判になります。

 

もともとの最初の契約者が2人ともすでに亡くなっていることも少なくありません。

ということは今やお互い会ったこともない人だというわけです。

 

今後、地代も含めて、家を建て直す、とか他の人に貸す、とか

地主さんの承諾が必要にならないとも言えません。

 

相続の話し合いと同じく、お互いの立場に立ってうまく話を進めるということが

なにより先決だということです。

 

 

 →→遺言書7つの誤解 その2「うちは仲がいいから遺言必要ない」

 →→分けづらい財産がある